20140131『母』 三浦綾子
以前小林多喜二の『蟹工船』がブームとなりましたが、そのお陰で当時の労働者の過酷な環境や、搾取する資本家階級やそれを守る権力に向かって立ち上がる労働者達の姿は、私たちに多くのことを教えてくれました。凄まじい迫害に耐えながらも最後まで労働者の立場に立っていた、多喜二自身の事にも思いを馳せることができます。しかし、ここで描かれているのは、多喜二の母の想いです。辛酸をなめながらも弱者を思いやり無償の愛情を注ぐ母の姿は、多喜二の優しさに重なります。貧乏人のいない世の中を作るために小説を書いている息子が、なぜお上から残虐な殺され方をされなければならないのか、母は納得がいきません。ここに表現されているのは、母親の盲目な愛ではなく、国家の正しいあり方を問うための貴重な証言です。...