20090423『魂の歌手』 澤田展人
澤田展人の『魂の歌手』は、北海道(特に炭鉱町)と青春(恋と学生運動)の香りに満ちた作品となっています。暗喩としての「香り」だけではなく、直接的に嗅覚を刺激する香りです。作者と同じ高校の同じ学年で学び、同じように炭鉱町を知っている私の記憶に残っている「香り」が、行間から立ち昇ってくるのです。この香りをパトリック・ジュースキントの『香水』で表現されている香りと比較すると面白いでしょう。食品のみならず、誰にでも何らかの香りによって呼び戻される記憶があるはずです。そのような感性を研ぎ澄ますのも、DP文学を学ぶ者にとっては重要なことです。例えば子どもの時に遊び疲れて(または塾帰りに?)自宅への帰路でカレーの香りがどこかから漂って来るというのは、日本人の原体験の一つではないでしょうか。...