5. HL エッセイ

HL小論文は、HLのみで求められている課題です。学んだ作品から1冊を選択し「探究の道筋」を決定して、2,400字〜3,000字で論じます。ただし個人口述で使用した(する予定)作品や、試験2比較小論文(Paper 2)で使用する予定の作品は使えません。具体例を示して解説します。
HLでは授業で学習した作品について「探究の道筋」を決めて、2,400〜3,000字の小論文を書くことが求められています。どの作品を選択しても良いですが、個人口述に使用した(する予定の)ものや、比較小論文(Paper 2)で使用する予定の作品は使えません。
「探究の道筋」は多くは疑問文として表現されますが、文学的分析を導くものでなくてはいけません。また広過ぎても不適切となります。例えば以下のようなものは適切とは言えません。
―カミュの『異邦人』における実存主義→哲学的な分析となっている
―夏目漱石の『こころ』における自殺の心理→心理学的な分析となる
―村田沙耶香の『コンビニ人間』におけるアイデンティティー→広過ぎる
これらは以下のようにすると適切なものとなります。
―カミュの『異邦人』において、作者はムルソーの異邦人性をどのように表現しているか
―夏目漱石の『こころ』において、「私」の出現が先生の自殺に与えた影響はどのようなものか
―村田沙耶香の『コンビニ人間』において、コンビニの存在は恵子のアイデンティティー形成にどのような影響を与えているか
探究の道筋の決定は非常に重要なので、生徒と教員で話し合うことが大切です。しかし、教員が探究の道筋を設定したり、使用作品を決めたりすることは適切ではありません。あくまでも生徒が作品を選択し、探究の道筋を考え、それに対してアドヴァイスをする形にすべきです。
探究の道筋の決定に関して、ガイドではコースの7つの主要概念を参考にすることを勧めています。
① アイデンティティー
作品中の特定の登場人物または登場人物のグループのアイデンティティーがどのように表現されているか、また作品が作者のアイデンティティーにどのように関わるかについて関心をもつ。
② 文化
ある特定の場所、組織、グループの文化がどのように表現されているか、あるいは作品自体が特定の文化にどのように関わっているかに関心をもつ。
③ 創造性
個人あるいは集団の創造性、あるいは創造性の欠如が作品中でどのように表現されているかについて、また作品が作者の創造性をどのように表現するかについて関心をもつ。
④ コミュニケーション
コミュニケーションという行為、あるいはミスコミュニケーションが作品の中でどのように表現されているか、また作品自体がコミュニケーションという行為をどのように表現しているかについて関心をもつ。
⑤ 変換
変換または変換という行為が作品の中でどのように表現されているか、また作品自体が他の作品から変換され(テクスト間の言及を通して)、あるいは現実から変換される(読者のアイデンティティー、関係性、目標、価値観、信念への変換的影響を通して)ことに関心をもつ。
⑥ 観点
作品の中に登場するある特定の観点や複数の観点、作品自体が作者の観点をどのように表現しているかについて関心をもつ。
⑦ 表現
作品自体がさまざまなテーマや態度、概念を表現する方法、または文学が実際に現実をどこまで表現できるかについて関心をもつ。
もちろんこの中から選択しなくてはいけないということではなく、考え始める時のヒントとして有効に活用すると良いという事です。ですから小論文の冒頭で探究の道筋を説明する時に「私は変換を選択し・・・・・・」などという記述は必要ありません。
小論文の下書きを書き上げたら、一度だけ教師がみてアドヴァイスをすることができます。しかしその際に「添削」してはいけません。口頭で改善点を指摘するか、別の形で書いたメモを渡すようにして下さい。下書きに朱を入れるような形での「添削」は禁じられています。例えば以下のようなアドヴァイスが有効となるでしょう。
―冒頭で探究の道筋をもっと明確に示して下さい。
―序論、本論、結論と書く必要はありませんが、論全体でそういった流れを意識して、構成が明瞭になるようにして下さい。
―探究の道筋以外の分析が多いので、もっと探究の道筋に焦点を絞って下さい。
―粗筋は必要ありません。
―クライテリアBをもう一度よく読んで、「分析と評価」が論に表れているかどうか確認して下さい。
―口語体が混じっているので注意してください。
―敬体と常体の混用がみられます。論文は常体で統一してください。
―結論で探究の道筋に沿った分析の結果を明確に述べていません。
―結論の意味を更に考えてみると良いでしょう。
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5. HL エッセイ
HLエッセイ 評価規準の理解と注意点
HLエッセイの特色の一つは「探究の道筋」ですが、この小論文を作成する、指導するにあたっての重要点は、評価規準を正しく理解することです。選択した「探究の道筋」によっては、点数を取りにくい評価規準もあるので、対処法も含めて詳しく解説します。 【評価規準A:知識、理解、解釈】5点