20101130『無名』 沢木耕太郎
沢木耕太郎はノンフィクション作家として有名ですが、本作は沢木の父親が倒れてから世を去るまでの看病記です。沢木はノンフィクションの世界に新たな風を吹き込んだ作家です。単に事実を書けば良いのではなく、書かれる対象により沿い、ほぼ生活を共にすることで相手を知ろうとします。フィクションを書く作家は、フィクションにより現実を明確に見せる手法をとりますが、ノンフィクションは創作が許されません。しかし、あるがままを書くだけでは対象の人生を描ききることはできません。やはり作家自身と対象との強い「干渉作用」があり、そこから見えてくる新たな「事実」を通してしか優れたノンフィクションは生まれないのでしょう。だからこそ沢木は幼い頃から父親は「守るべき存在」だと考えていたのかもしれません。...