20121229『母の遺産 新聞小説』 水村美苗
日本は世界でもトップレベルの長寿国です。それ故に両親の面倒をみる子どももまた高齢になってくるという場合が多く見られるでしょう。本作には母を介護して看取った娘の心境が綴られていますが、主人公は母に振り回されることにより「生きる希望が目に見えて枯れていっていた」と述懐しています。しかし母を憎みながらも、自分の身体の中に母の血が流れていることを認識します。それも「母の遺産」なのでしょうか。カミュの『異邦人』でムルソーが、健康な人は誰でも多かれ少なかれ愛する者の死を願うものだ、という台詞は、決して異常ではないでしょう。日本の現状を考えると、喫緊の問題を提示している作品であると言えます。 水村美苗の『母の遺産...