20131130『凍』 沢木耕太郎
沢木耕太郎はノンフィクションに新たな地平線を切り開いた作家と言えます。書きたい対象と生活を共にして、ある種「一体化」しながら構想を練ります。紡ぎ上げるテクストは、単なるノンフィクションではなく、作者と被写体との限界に近い交流です。必然的に彼の作品は「異常な」熱を帯びています。『凍』はヒマラヤのギャチュンカンに挑んだ山岳家山野井夫妻を描いています。奇跡的な精神力と意志力で二人は生還しますが、妻の妙子は凍傷で手足の指を18本失います。それでもめげることはなく、残った手で料理をして、本を読みます。同時に入院していた暴力団員(指を詰めたので)が、看護師から小指の1本くらいで泣き言を言うなと妙子の症状を教えられ、退院してから菓子折を持って妙子の病室に挨拶に行くエピソードは痛快です。...