20110628『秘花』 瀬戸内寂聴
瀬戸内寂聴は艶な作家です。仏門に入ってもますます魅力的になり、最後まで「花」がありました。仏門に入る人は、一般人より欲望が強い人なのでしょう。最初から枯れている人は、仏を必要としないでしょうから。この作品で描かれるのは、能の完成車世阿弥の老境です。美童であった世阿弥は歳をとっても魅力的な人だったようです。「秘すれば花」、世阿弥は花とは何かと問われて「色気だ。惚れさせる魅力だ」と答えます。色気は分かりますが、「惚れさせる」魅力となると圧倒されます。肉体を超越して、形而上の世界に入っていく世阿弥はこの世とあの世の境界の住人です。寂聴も生あるうちに彼岸と通じていたような人でした。「艶」とは何かという事をこれ程見事に教えてくれる作品はないでしょう。...