20100629『宗左近詩集』 宗左近
宗左近の筆名は、東京大空襲の時に母の手を離してしまったために母を死なせてしまった自分への後悔と叱咤の意を込めて「そうさ、こんちくしょう!」から取ったということです。自分の目の前で母親が炎に巻かれて死んで行く、走って逃げないと自分も間違いなく死ぬ、そんな時に走る自分にどのような理由が考えられるでしょう。詩人は「走ったから走ったのだ」と書きます。誰が悪いわけでもありません。強いて言うならば戦争が悪いのだし、戦争を始めた人たちの責任です。しかし、詩人は他者のせいにしません。思想を越えた実存的な何かの不気味さ、恐ろしさがじわじわと迫ってきます。自己を見失いがちな現代においてこそ、この存在の不気味さというものを生々しく表現している詩の価値と重みが増すのではないでしょうか。...