「一枚の白紙」
「一枚の白紙」
目の前に一枚のA4版の白紙があります。そこから雑談が始まります。一枚の白紙とは何でしょうか。「白紙」とは何でしょうか。もちろん「白い紙です」と答えることはできます。しかし「白い」とは何でしょうか。色でしょうか?
物理学的に判断すると、白とは全ての光を反射するものですから、明確に言えば「色」ではありません。黒も同じ事ですので、色とは「色ではない」純粋な白と黒との間に無限に存在するものでしょう。
皆さんが何かを「白い」と言うとき、それは全員に共通の概念でしょうか。ある人はそれを灰色に近い白と感じているかもしれませんし、別の人は少し赤みがかった白と思っているかもしれません。例えば色見本を見ると、数多くの白系統の色が出ています。自分の思っている「白」はどのような色か確かめてみて下さい。
カラーコード#F0F0F0は名称が「白(しろ)」となっていますが、私の目には薄〜い灰色に見えます。#FFFFFBの名称は「ホワイト(White)」で、これは私が思い描く「白」のイメージです。皆さんの白のイメージはどのようなものだったでしょうか。とにかく確かなことは、誰かが何かを「白」と表現したときに、他の人たちが「そうだ」と言っても、皆が同じ色を想い浮かべているとは限らないということです。
一つの詩の冒頭に「白い朝」という一行があったとします。ここから浮かんでくるイメージは何でしょうか。朝霧、朝日、寒さ、希望、期待、虚無、清潔、潔白・・・・・・多くのことが考えられるでしょう。それらを想い浮かべながら、次の一行を読んでいきます。そうして、この詩に対する自分の解釈やイメージが出来上がっていきます。それは、ある程度の方向性を示しながらも無限の変化の可能性を秘めています。それを楽しむのが文学です。
明確な一つの答えがないから文学は難しいと考える人がいますし、数学のように答えがはっきりしている方が良いと思う人もいます。しかし、数学はかつて(今も)音楽や詩と近い存在でした。想像力と創造力の必要な世界です。インドの有名な数学塾「Super 30」を主宰するアーナンド・クマールさんは、全国から30人の生徒を選抜するときに筆記試験を課します。そして彼が見るのは答えよりも余白(白紙)に書かれている思考過程だそうです。つまりその生徒がいかに豊かな想像力と創造力を持ち合わせているか判断するのです。それが将来の成長を示しているのです。
一枚の白紙は色々なことを教えてくれます。