試験問題1(Paper 1) 生徒用
「試験問題1 設問つき文学分析」(Paper 1)は、学んだ4つの文学形式(随筆/評論、物語/小説、詩歌、戯曲)のうち2つの文学形式から出題されます。何が出るかは分かりません。ある年は評論と戯曲が出たり、次の年は小説と詩が出たりと、規則性はありません。ですから、4つの文学形式の特徴をしっかりと掴み、何が出ても大丈夫なように練習を積んでおくことが重要です。
2つの文章には、それぞれ技法または形式に関わる一つの「考察を促す問い」がついています。この問いを中心にして、文章を分析していきます。IBの規則では「この問いに答えることが必須ではありません」となっていますが、もしこの問いを使用しない場合は、自分で技法または形式に関わる「考察を促す問い」を設定して、その理由も述べなくてはいけないので、時間がかかりより難しくなります。従いまして、一般的にはIBが設定した問いを使用する受験生がほとんどです。
SLは二つの文章の内一つを選択すればよく、選択肢がありますが、HLは2つとも分析しなくてはならないので、難易度が高くなっています。評価規準を良く理解して特徴を把握して、素早く分析していくことが重要です。また、SLとHLで評価規準は同じです。つまりSLとHLの差別化は評価のレベルではなく、選択肢があるかどうかということと、制限時間が1時間15分と2時間15分の違いです。
どちらのレベルにしろ、見直しの時間を考えると、約1時間で一つの問題に答える必要があります。字数制限はありませんが、しっかりとした答案を書くには、原稿用紙(400字)4枚程度は必要です。書く内容が決まっていると、原稿用紙一枚は10分程度で書けます(もちろん多くの練習が必要で、これはあくまでも試験直前までの目標です)。そうすると4枚書くためには40〜45分が必要で、残る時間は15〜20分です。つまり文章を分析して、考察を促す問いの答えを明確に見つけて、簡単なプランを立てることを、20分以内で仕上げなくてはいけません。
最初はもっと時間がかかるでしょうが、毎週練習を繰り返していくと、試験までには間に合います。急に書けるようにはなりませんから、DPの早い段階で文章分析や答案を書く練習を始めて、それを4つの文学形式に関して続けてください。書く練習は最後で良いと考えずに、とにかく早めに規則正しく練習を積み重ねてください。
答案を採点するのには「評価規準」が使われます。以下にその特色と注意する点を示します。
【評価規準A:理解と解釈】5点
文章を理解し、解釈することが求められています。ただし、あくまでも与えられた設問または自分で設定した設問に沿って文章を理解し、解釈することが大切です。文章について理解したことは何でも述べてよいということではありません。これを外すと大減点となりますので注意して下さい。「設問」に答えることを第一義として、それを通して文章のテーマに言及しなくてはいけません。設問と関係のない要素の分析は必要無いどころか却って点数を落としてしまいますので注意が必要です。
評価規準をしっかりと読むことが大切です。このAでは明示と暗示という語彙が使われています。明示とは、文章にはっきりと書かれていることです。暗示は、文章に書かれていなくても、想像力で理解できることです。例えば小説が出て、その中で登場人物の一人が「あんたなんか嫌いだ!」と叫んだとします。明示では、この人物が相手のことを嫌いだと言ったことを指します。暗示では、前後の関係から考えて、実はこの人物は相手のことが好きなのに、ここでわざと嫌いだといったと解釈できるかもしれません。しかし、特に暗示を分析する時は、自分の考えの「根拠」を示すことが大切です。文章から直接/間接引用をして、自分の分析が正しいことを説明しましょう。
【評価規準B:分析と評価】5点
まずテクストの特徴や作者の選択を分析することが必要です。これは狭い意味でのレトリック(技巧)だけではなく、「効果的」であればどんなことでも重要です。そしてしっかりと「設問」を意識していることも大切です。文末表現に特色があっても、設問と結びつけて分析・評価ができないならば、書かない方が賢明です。論の焦点が曖昧になってしまいます。特に詩の分析などに多く見られますが、多くのレトリック(比喩、韻、反復、対句、トーン、句読点等)を指摘するだけで終わっている答案は高得点にはなりません。
この規準では「評価」が大切です。分析の結果を考察して、それはどのような効果をあげていて、テーマとどのように結びついているか、深く考えて下さい。例えば卵の描写があったとします。「白い卵」という表現が始めと終わりに出てきます。途中では同じ白い卵でも、少し灰色がかったり、青みが見られたり、白い色以外が混入している卵の描写がされています。これらを指摘して、その数や色の名称が喚起するイメージや、描写の量等を分析します。それを評価するには、始めと終わりに同じ卵が「白い」と同じ語彙で描写されているが、終わりの卵の白は初めの卵の白よりももっと白いイメージを与えている、それは途中の白い卵には別の色が混じり込んでいるので、読者の脳裏に真っ白ではない卵のイメージが刷り込まれていき、最後に混じりけのない「白い」卵が再登場するので、冒頭の白よりも純白さが強調されている、などとします。そして、主人公が交流する友人達に見られる少しばかりの「不純さ」を描写することによって、作者は主人公の純粋さをエピローグで上手く強調することに成功している、などと評価すると良いでしょう。
【評価規準C:焦点と構成】5点
論の焦点はもちろん設問に明確に直接的に答えているか、ということになります。また構成に関しては、一貫性という要素が重要です。そのためには序論において、設問を明確に解釈して、本論でどのように分析を進めていくか予告します。本論ではそれにしっかりと従って、いくつかの要素を明快に分析し、解釈し、評価して結論に備えます。
ここで大切なのは、序論で示した方向性を守ることです。書いていく内に別の要素も加えたいとか、別の気づきが生まれてそれを述べたい、という誘惑に駆られますが、それはやめた方が良いでしょう。どうしても焦点が曖昧になってしまうからです。一貫性も失われていきます。徹底して設問に答えることを意識して、それを通して問題文のテーマ、メッセージ、核心に迫っていくことを目指して下さい。また設問に対する答えをQ&Aのように述べるのでは、高得点に至りません。設問はあくまでも山の「入口」を示すものであり、その後に山頂に辿り着けるように考察を深めて下さい。
【評価規準D:言語】5点
言語使用域(語彙・語調・構文・専門用語)とスタイルについて判断されるのがこの評価規準です。別の言葉で言うならば「文章力」です。
論文を書くための基本を抑えるのが第一です。常体に敬体が混ざらない、同音異義語の間違いをしない、文の長さや段落の長さを適切にする、段落の冒頭は一字下げ行頭に句読点が来ないようにする、文のねじれを無くす、「思う」、「感じる」等を使用しない等の基本的な要素が守られていれば大丈夫です。
さらに上を目指すためには、文学の論文に相応しい語彙を使用する、接続詞を多用しない、不必要に同一語(語句)の反復をしない、文末表現をワンパターンにしない、等が必要になってきます。
ここで注意すべきは「専門用語」に余り拘らないことです。自分でも理解が及んでいないような難解な語彙を多用しても高得点にはなりません。それよりも自分で使いこなせる語彙を活用して、明快で分かりやすい論を書く方が高得点になります。自分で黙読して、途中で引っかかったり、何か気になったりするような場合は、どこかがおかしいと思ってください。そうして、少しでも分かり易く、言いたいことが伝わるようにすることが大切です。