20091031『本格小説』 水村美苗
水村美苗は多くの話題作を提供してくれる作家です。夏目漱石の未完の作品『明暗』の続きを書き、一つの完成形を示すなどという、良い意味でとんでもない冒険をしてくれました。彼女の作品にはDPで議論するための要素が沢山ちりばめられています。また、彼女は日本生まれでアメリカで育ち、フランス文学を学んだ国際人でもあります。日本語でDP文学を選択する生徒たちの環境と似ている所があります。この『本格小説』は私小説の一ジャンルである「心境小説」と対峙されていますが、それだけではなく種々の「仕掛け」が潜んでいます。文学理論から読んでも良いですし、「私小説」という概念から読んでもかまいません。多くの考察を許すテクストとなっています。それを書くことができるのが、水村美苗の特色であり、DPとの親和性の高さを示しています。...