20110822『破獄』 吉村昭
吉村昭は多くの優れた歴史文学を著していますが、この『破獄』は少々異色の作品となっています。まず、とんでもなく面白いのです。事実は小説よりも奇なり、と言いますが、この作品にはモデルがいて、彼は間違いなく脱獄名人でした。脱獄にかける執念と努力は気が遠くなるほどですが、物理的手法とは別に心理学の天才的応用が見られます。主人公は看守に虐待されると、あなたの当直の日に逃げますよ、と脅します。これで多くの看守は虐待を辞めます。自分が当番の日に逃げられたら大きな失態となるからです。そして、虐待を辞めなかった時は、必ず脱獄されています。主人公を人として認め、遇した刑務所長の所では脱獄は起こりませんでした。TOKや心理学と絡めても面白い分析ができるテクストです。 「脱獄の天才」...