20130727『ホテルローヤル』 桜木紫乃
桜木紫乃の直木賞受賞作品です。『ホテルローヤル』を読んだときにまず感じたのは、桜木の文体の安定感です。現在は彼女の文庫化された作品をほぼ全て読みましたが、やはり圧倒的に秀作が多く、それはまず偏に文体の確かさにあります。微妙な「揺れ」はどんな作家にもありますし、作家も年齢とともに変化していきます。しかし、桜木の面白さは、初期の作品から「老成」した香りを感じるのです。作家のバックグラウンドが影響しているのか、釧路湿原の影響なのか、海霧のせいなのかは分かりませんが、間違いなくこの作家の持つ特徴の一つです。本作は中上健次の持つ「熱さ」とは正反対の「冷たさ」を持っており、そこに土地から染み出てくる哀感のようなものを感じることができます。 「登場人物の同伴者としての作家」...